7人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
せっかく学園転生系の新作漫画を買って来てウキウキしながら読んでいたところに水を差された格好だ。
「はぁ、買ってくるか」
普段ならビールがなかった時点で飲酒は諦めるのだが、新作を見るときはやっぱりお供がなければ漫画を読む気にはならない。
私は近くの椅子に掛けてあった上着に袖を通し、玄関へと向かう。そして家の扉を開けた瞬間に冬特有の冷たい北風が私の身体を襲う。
「寒っ!早くコンビニに行って帰ろう」
少し駆け足で私は近所のコンビニへと向かう。
一番近いコンビニまで片道10分は掛かる。東京のように歩いて2分とかの近くにコンビニがないのが田舎の辛いところである。
上着のポケットに手を突っ込み息を吐くと真っ白な空気が目の前に広がった。
こういう寒いときに限って夜空は澄んで綺麗である。一転の曇りもない漆黒の空を満天の星と大きな月が支配している。
そんな空を見ながら歩いていると田舎の暗闇には不似合いな煌々と電気を付けたコンビニに着いた。
「らっしゃいませー」
中に入るとやる気のなさそうな金髪のアルバイト店員が髪をいじりながら挨拶をする。
深夜ということもありお客さんは誰もいない。それもあり尚更このアルバイトの自由が許されているのだろう。
私はおもてなし精神の欠片もない彼にイラッとしながらもビールのコーナーへと向かう。
冷蔵庫の中には沢山の種類のお酒が置いてあったが、私はいつものビールを両手に持てるだけ持ってそれをレジへと持っていく。
「お願いします」
金髪店員はカウンターに置かれたビールの量を見てクスッと軽く笑ってからバーコードの読み取り作業を行う。
悪かったね。アル中のおばさんで。
レジが終わると大量のビールが入ったレジ袋を持ってお店を出た。
「あー、寒い」
戦利品を持って家に帰ろうと歩きだした瞬間だった。静寂に包まれている住宅街には似つかわしくないけたたましい音のクラクションが鳴り響いたと同時に私に車が突っ込んできた。
最初のコメントを投稿しよう!