1話

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その後の事は分からない。ただ、気付いたら目の前に見慣れない美少女が目に涙を貯めて私の顔を覗き込んでいた。 「あ!目を覚ました!」 そういうと彼女は私の身体を抱き締めた。するとお花のようななんとも言えない良い香りが私の鼻腔をくすぐる。 「目を覚まして良かった」 えーっと・・・誰!? 肩の辺りまで伸びた髪はサラサラで水滴すら溢れ落ちそう。そして肌も白く透き通っており、目はパッチリ二重。モテの三種の神器を兼ね備えた女の子だった。 30代前半で彼氏無し、男友達無しのからっからに干からびた私にはこんなキラキラ輝く人物の知り合いはいない。 だけどこの子に少し見覚えがあるのは何故だろうか。 「本当に心配したんだよ」 「・・・」 美少女に心配されるのは嬉しい。だが、全く誰か分からない人にどんな反応をすれば良いのか困る。 「もしかして頭打って記憶喪失になったの?」 先程までビールとスルメを食べながら漫画を見ていて、飲み物が無くなったからコンビニに買いに行った。そして意気揚々とお店を出ると、その後車が突っ込んできたんだよね。 うん。さっきの出来事を覚えてるから記憶喪失ではないよね。この子誰かと勘違いしてないかな。 「あの、すいません。誰かと勘違いしてませんか?」 私がそういうと彼女は私の顔を見て目に貯めていた涙を大量に流す。 「瑠璃ちゃんが私のせいで記憶喪失に」 ええ!なんか私が泣かしてしまったみたいで嫌なんですけど。それに私の名前は綾子で瑠璃ではありません。 わんわん泣く美少女に戸惑っていると、騒ぎを聞き付けた看護師がやって来た。 「どうしました?あ、東城さん。大丈夫ですか?」 東城?看護師さんまで私の名前を間違えるの? 「看護師さん。瑠璃ちゃんが記憶喪失みたいで」 「え?そうなんですか?それは先生を呼ばないと」 「ちょ、ちょっと待ってください。私は記憶喪失じゃないし、名前も長田綾子って31年間背負ってきた名前がありますから!!」 私の言葉に二人は首をかしげる。 「うーん。何だか記憶がおかしくなっているのかも知れませんね。すぐに先生呼んできます」 「お願いします」 何かがおかしい。 ベットから起き上がり壁に付いている名前のプレートを見ると確かに東城瑠璃の名前が書いてある。 そしてふと身体を見るとシワが多かった手は綺麗な肌にそして胸は私には全く無かった山が二つある。
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