プロローグ

2/7
268人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
オフィスの入っているビルに入り、エレベーターのボタンを押す。 次々と私の後ろに人が着き、到着する頃には10人以上の列が出来ていた。 ぞろぞろとエレベーターに乗り込むと、私は壁際に押し込まれる。 く、苦しい⋯。 どうにか鞄を胸の前に抱えて隙間を作る。 これが日常だから仕方ない。 「紗希!」 げっ、この声はまさか⋯。 こんな密室で私を呼ぶ男の声。 私の嫌いなヤツの声。 その声の主は、あろうことかこんなに密集する人を押し分けて私の前に来る。 押された人は怪訝な目でその男を見ていた。 「紗希、おはよ」 そんな周囲の目を気にせずに、私にニコリと笑って挨拶をする男、月嶋海翔は同じ部署の同期のモテ男。 キリッとした整えられた眉に切れ長の目、整った鼻筋に薄い唇。 さらには茶髪の髪を整えていて、まるで絵本から出てきた王子様みたいな風貌だ。 そんな海翔は、何かと私に絡んでくる。 何かあれば私をからかってくるのだ。 真面目な話をしていてもそう。 その場の雰囲気は海翔の一声で変わることもある。 もちろん真面目な時は真面目だし、的確なアドバイスを周りにくれることも多々ある。 海翔も後輩から頼りにされてる人だ。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!