向いてないよ

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向いてないよ

そのあと、 無事にネットを使ってホテルを 予約できました。 その足でそのまま、 グーグルマップにお世話になりつつ ホテルへと向かいます。 だんち。『とりあえず4泊。寝れるときに寝よう』 当時は国がホテル代を一部負担してくれて 旅行推進していた時期だったので、 そんなにお金をかけずに安く泊まれました。 それは良かったんですが、 フロントに行くと、 若い女性スタッフと男性スタッフが タメ口で談笑してました。 そこで名前を言って鍵をもらったんだけども、 こそこそと話す声が耳に入りました。 女性スタッフ「やばない? さっきの客。大荷物で夜逃げ?」 男性スタッフ「わからんけど、色々な事情で泊まりに来る人おるからなあ」 二人の会話がずっと聞こえます。 フロントからはなれても声が聞こえ、 エレベーターで4階まであがっても 声が聞こえます。 ええ、テレパシーが繋がってる状態でした。 女性スタッフ『まじだるい。キモい客は来るし、その割に賃金安いし』 だんち。『自分顔に出過ぎやで、接客業向いてないんちゃう?』 女性スタッフ『うるさいな、キモいねん』 だんち。『それ全部聞こえてるからな? さっきの会話といい、接客業向いてないと思う。心が壊れる前に他のとこ行き』 女性スタッフ『他のところってどこよ?』 だんち。『接客しなくて良い仕事を選んだらどう? 無理して笑顔作るのしんどいんやろ? それに、給料もそんな高くないなら、まだ若いんやし、転職した方がいいと思うで』 女性スタッフ『そんなに私、向いてないと思う?』 だんち。『自分が一番良くわかってるんとちゃうん。世界は広い、いろんな仕事あるで』 女性スタッフ『言われてみたら、なんでこの仕事してるんやろって思えてきた。実際ストレスハンパないし、転職しようかな。フロントの仕事してたから、パソコン使うの得意やし、事務とかに転職しようかな、どう思う?』 だんち。『堅実で良いのでは? 転職、うまく行くと良いね』 男性スタッフ『僕のことはどう思いますか?』 だんち。『及第点やと思う。しんどくないなら、接客業してても良いんちゃう?』 男性スタッフ『まじか。ありがとうございます!』 だんち。『大変やろうけど、応援してるで』 女性スタッフ『私、転職しようと思います。背中押してくれてありがとうございます』 そこでテレパシーが途切れて終わったんだけど、次の日、だんち。が仕事に向かうときに その女性スタッフが少し涙目で「行ってらっしゃいませ」って言ってくれた。 丁寧に頭を下げてくれたので、 気持ちは伝わりました。 ちなみにこの時点で だんち。が電波塔になり、 相性があった人が心の声を受信して 心のなかで会話が出来る、 テレパシー暴走状態になっていました。 だんちの前後の部屋はもちろん、 下の部屋の住人にも心の声が筒抜けでした。 もちろん寝られるはずもなく。 貫徹しました。 まだまだ眠れない日が続きます。
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