・・・

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

・・・

 『いや、そんなことよりどっか行け!   うるさい!うるさい!うるさい!   俺の邪魔をするな、失せろ!   クソクソクソ!』 「何だお前も飲みたいのか?」  『えっ?誰?お、俺?』 「そこに突っ立ってる、お前じゃて」  「俺?」 「他に誰かおるんか?」 「兄ちゃん、この旦那悪人かもしれないけど気前はいいぞ。このショットグラスだって結構なしろもんだ。どっから持って来たんだか…まぁ一緒に飲んでみなよ」  「の、飲めるか!!  お前らみてぇな得体の知れない奴らと」 「クソガキが、黙って飲め!!」  『うっ…何だ、この威圧感!ぱねぇ、まじモンかよ』 「そんな恐る恐る近寄らなくても、旦那は大丈夫だって。ほらこのグラス使ってないから使いなよ」 「ほら、飲め飲め!クソガキ」  「クソガキじゃねぇ!」 「こんなところで何時間も突っ立ってるなんざ、友達もいねぇ、クソガキだろうが。悔しかったら、長生きしてみろ!」 「爺さん、何百年生きてんだ⁈」 「クソガキやお前さんよりゃ長生きしてるんじゃ。尊敬しやがれってもんじゃろ、愚か者!」  「こんな真っ昼間から、  駅で酒盛りしてる奴らがなに偉そうに。  蘊蓄タレてんじゃねぇ!」 「黙れ、クソガキ!!」 「まったまった爺さん!杖はダメでしょ、杖で殴っちゃ、あー!!!!」  『え⁈今ボキッっていったよな。  腕!痛ってぇ…。  まじこの爺い、杖で殴りやがった…。  マジやべえ。  おかしいだろ、こいつ。  マジ、痛ってぇ。  怖えぇ…ど、どうしよぅ』 「ひび入ったくらいで泣く奴があるか。兄ちゃん、座れ。ほらほら浮浪者どいてやれ。お前は床でいいやろぅ。ほら、飲め飲め!酒は薬だぞ。ありがたく飲め!」 「おっとこれはごめんな、あんちゃん。ビビんなくていいからさ。まぁでも、ビビるよね。いきなり殴られたら。ささ、どうぞどうぞ座って座って。今ついでやっからさ。ほらグイッと」  「ゴホッゴホッ…」 「おい兄ちゃん、酒飲めねぇんかい。こりゃ悪かったな。ならこっちやるから、飲んでみな。うめぇぞ!」  「もう、いいっす…。大丈夫なんで」  『なんでこんな時、電車来ないんか?  もう、帰りたいよ。  姉ちゃん。  誰でもいいから、客来いよ』 「汚くないから、さぁさぁ。この水ね、美味いんだよ。龍桜山って山の方に湧き水があってさ、いっつも汲みに行ってんだ」  「え?龍桜山の湧き水⁈  俺んちも家族で汲みに行ったことあるけど、    車でも…。  まじめっちゃ遠くないっすか?」 「いやぁ、時間だけはいくらでもあるからねぇ。それにほら美味いし、タダだしね。ささ、飲んでよ飲んでよ」  「あ…ありがとうございます。  あれ⁈うまいや」 「な、だろだろ。ささ、もう一杯飲んでよ飲んでよ。遠慮なく」  「すんません」  『いやいや謝る必要なくない、俺。   被害者じゃね?』
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!