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『いや、そんなことよりどっか行け!
うるさい!うるさい!うるさい!
俺の邪魔をするな、失せろ!
クソクソクソ!』
「何だお前も飲みたいのか?」
『えっ?誰?お、俺?』
「そこに突っ立ってる、お前じゃて」
「俺?」
「他に誰かおるんか?」
「兄ちゃん、この旦那悪人かもしれないけど気前はいいぞ。このショットグラスだって結構なしろもんだ。どっから持って来たんだか…まぁ一緒に飲んでみなよ」
「の、飲めるか!!
お前らみてぇな得体の知れない奴らと」
「クソガキが、黙って飲め!!」
『うっ…何だ、この威圧感!ぱねぇ、まじモンかよ』
「そんな恐る恐る近寄らなくても、旦那は大丈夫だって。ほらこのグラス使ってないから使いなよ」
「ほら、飲め飲め!クソガキ」
「クソガキじゃねぇ!」
「こんなところで何時間も突っ立ってるなんざ、友達もいねぇ、クソガキだろうが。悔しかったら、長生きしてみろ!」
「爺さん、何百年生きてんだ⁈」
「クソガキやお前さんよりゃ長生きしてるんじゃ。尊敬しやがれってもんじゃろ、愚か者!」
「こんな真っ昼間から、
駅で酒盛りしてる奴らがなに偉そうに。
蘊蓄タレてんじゃねぇ!」
「黙れ、クソガキ!!」
「まったまった爺さん!杖はダメでしょ、杖で殴っちゃ、あー!!!!」
『え⁈今ボキッっていったよな。
腕!痛ってぇ…。
まじこの爺い、杖で殴りやがった…。
マジやべえ。
おかしいだろ、こいつ。
マジ、痛ってぇ。
怖えぇ…ど、どうしよぅ』
「ひび入ったくらいで泣く奴があるか。兄ちゃん、座れ。ほらほら浮浪者どいてやれ。お前は床でいいやろぅ。ほら、飲め飲め!酒は薬だぞ。ありがたく飲め!」
「おっとこれはごめんな、あんちゃん。ビビんなくていいからさ。まぁでも、ビビるよね。いきなり殴られたら。ささ、どうぞどうぞ座って座って。今ついでやっからさ。ほらグイッと」
「ゴホッゴホッ…」
「おい兄ちゃん、酒飲めねぇんかい。こりゃ悪かったな。ならこっちやるから、飲んでみな。うめぇぞ!」
「もう、いいっす…。大丈夫なんで」
『なんでこんな時、電車来ないんか?
もう、帰りたいよ。
姉ちゃん。
誰でもいいから、客来いよ』
「汚くないから、さぁさぁ。この水ね、美味いんだよ。龍桜山って山の方に湧き水があってさ、いっつも汲みに行ってんだ」
「え?龍桜山の湧き水⁈
俺んちも家族で汲みに行ったことあるけど、
車でも…。
まじめっちゃ遠くないっすか?」
「いやぁ、時間だけはいくらでもあるからねぇ。それにほら美味いし、タダだしね。ささ、飲んでよ飲んでよ」
「あ…ありがとうございます。
あれ⁈うまいや」
「な、だろだろ。ささ、もう一杯飲んでよ飲んでよ。遠慮なく」
「すんません」
『いやいや謝る必要なくない、俺。
被害者じゃね?』
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