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給食ガチャ
色々な不運が重なり、僕は今限界に近い空腹だ――。
事の発端は昨日の夕方、こたつでゲームをしながら眠ってしまったことに始まった。その時は当然、夕食の時間には起こされるだろうとたかをくくっていたのだが、あろうことか両親は「このまま朝まで寝かそう」というとんでもない判断ミスを犯す。
そして常日頃愛飲していた「睡眠の質改善」を謳った乳酸菌飲料がここへ来て力を発揮したのか、エグすぎるノンレム睡眠の果てに、僕は寝坊をした。
食パンをくわえながら走るというカジュアルな演出も叶わず、この時点で夕食と朝食の二食を抜いた状態になってしまった。
お腹と背中がくっつきそうという表現が、今まさに現実になろうかと言うほどに、お腹はギュルギュルと食べ物をよこせと喚いている。
僕は這いずるように黒板の横の掲示板に向かい、ほぼ一日ぶりとなるだろう食事の、今日の給食の献立を確認した。
『牛乳、白米、ピクルス、あじの南蛮煮』
そう書かれていた。
「終わったわ」
思わず声が出た。なぜかこのタイミングで、給食のメニューが全体的に酸っぱいのだ。泣けてきた。酸っぱいのだ。
え、どういうセンスなの?
なぜピクルスと南蛮煮を同日に送り出すというムーブを思い付くの?
誰か止めなかったの、おかしいと思わなかったの、酸っぱいと思わなかったの?
教育委員会の連中を呼びつけて、小一時間シュールストレミングの香りが充満した部屋で詰問したい気分だった。
すると突然、僕は目の前が真っ暗になった。
比喩表現じゃなく、物理的にだ。
あたりを見回すと、ガチャガチャの機械が置いてあった。
そこには「給食ガチャ」と書かれている。
気付けば僕の手には『ピクルス』と書かれたコインがあった。
なるほど、このピクルスコインを入れてガチャを回すことで、給食のメニューを変えることが出来るのだ。そう直感した。
ありがとう給食の神様。
やっぱりそうですよね、酸っぱいですよね。
このチャンス、活かさせていただきます!
僕はピクルスのコインを強かにベットすると、力強くガチャガチャをレバーを回した。頼む、良いのが来てくれ。唐揚げ、カレー、シチュー、揚げパン!
カラン!
透明のカップに丸まった紙が入っていた。僕は急いでケースを開けて、書いてある内容を確認した。そこにはこんな言葉が書いてあった。
『シュールストレミング』
僕はこう言うしか無かった。
「……グローバルな、給食ガチャだぜ」
■おわり■
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