終章 愛しの女王様に捧げる下剋上

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「犬塚!」  楽しい時間を過ごし、お開きとなった頃。店を出て三課メンバーがそれぞれの帰路に着こうとしていた時…宮嶋が蒼生を呼んだ。  雅と共に帰路に着こうとしていた蒼生が振り返ると、宮嶋が勢いよく肩を組んできた。 「昨日さ、お前が女の子達に囲まれてた時…王崎課長、絶対に嫉妬してたぞ」 「そ、そうですかね…?」  小声で話しかけてくる宮嶋に、蒼生も声を小さくして聞き返す。 「あぁ…お前が今日いつもの犬塚に戻ってることが何よりの証拠だ。犬塚の話を聞いて思ったけど、昨日何かしら課長に甘い言葉でもかけられて説得されたんだろ、お前」  そう、雅は営業課のエース。相手をその気にさせるのはお手のもの。 「恋人が自分のために素敵に変身しようとしてんのに、モテちゃうもんだから元の冴えない男のままでいろって事だ。かなりの独占欲だと思うぜ、俺は」  宮嶋の言葉に一瞬喜ぶ蒼生だったが、すぐに気掛かりな部分があり、すぐに問い返す蒼生。 「…僕、普段そんなに冴えないですか?」 「…言葉の綾だ。その素朴さが犬塚の良いところでもあるし……まぁ、いいじゃねぇか。隠れイケメンキャラで通してけよ」  なんだよそれ…と、ジト目で蒼生が宮嶋を見ていると、彼は悪びれもなく笑っていた。
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