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序章 犬が女王様を拾った日
新卒入社三年目、営業成績そこそこの若手社員である犬塚蒼生が勤める会社には女王様がいた。
その名も王崎雅。美人でスタイルも良く、仕事の出来る営業部エースで蒼生の直属の上司だ。その清楚感溢れる美貌と女性らしい曲線のあるスタイルが男衆にはたまらないと大人気な課長だった。
しかし彼女が素晴らしいのは見た目と仕事能力だけで、性格はそこまで良くないと蒼生は思う…。
『犬塚くーん。資料の数値がまた間違えてるんだけど、貴方いつになったらまともな仕事が出来るの?』
『私の明日のコンペ資料、今日の午後までにコピーしといてね』
『今から取引先を回るんだけど、貴方も同行させてあげるわ。荷物持ち兼運転手として』
『犬塚くん、コーヒー淹れてきて。お砂糖は三つ!』
と、このように蒼生は雅に、仕事のミスを嫌味な言い方で指摘されてはこき使われる日々を送っていた。まるで自分は女王様の犬である。
周りがどんなに高嶺の花だと騒ごうと、蒼生は雅が好きにはなれなかった。
ミスをしたのは自分が悪いけれど上司なら言い方を考えて欲しいし、自分はあくまでも部下なだけで雅の世話をする義務もないのだ、自分のことは自分でして欲しい。
それに何となくだけれど、雅は蒼生に対して特に意地悪で尊大な気がする。しかし、ちょっぴり気弱な蒼生は雅に反抗することなど出来ずについ従順に従ってしまうのだ。
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