17.アルファの抑制剤

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* 「あーあ、可愛いシャチ君もついに高校生かぁ~」 「ホーント、いいオトコになっちゃって!」  高校に入学した俺は、父と5人の愛人たちと住んでいた家を出て、学校まで電車で一駅ほどのマンション(父の持ち物)で一人暮らしをすることになった。  もし俺がツガイにしたいと思った人が現れたとき、5人のオメガと一緒に住んでいることが分かったら相手はいい顔はしないだろう、とかオヤジが言って……。  そんな相手、現れるかどうかもわかんねーのに。  俺は幼い頃からアケスケでホンポーなオネーサンたちと暮らしていたせいか、歳の近い女子に告白されても全然性的な魅力を感じなかった。  つまり、初恋すらまだだ。  だから余計に、コドモアツカイされていたのかもしれない。 「困ったことがあったらすぐに帰ってくるのよ、いいわね?」 「私、毎日ごはん作りに行こうか?」 「あッズルーい! それ毎日日替わりでいいでしょ!」 「ナイスアイデア! 土日だけは自分の力で……」 「いい、いい! 姉さんたちに会いたいときは俺から行くから、絶対こっちには来ないで……」  初恋はまだだが、思春期だ。  俺だって色々と思う事はある。  父の愛人たち――姉さんたちはとても残念な顔をしたが、快く見送ってくれた。俺は家事はほとんどできないし、(週3でハウスキーパーが来てくれることになっている)スキナヒト……ましてやツガイにしたいと思うヒトが現れるのなんて、わかんねーけど……  まあ、なんとかなるだろう。  そういえば、最後に海月さんに言われた言葉。  「ねえシャチ君、アルファだからって別に無理にオメガを好きにならなくてもいいのよ。ベータだってアルファだっていいの、恋愛は自由なんだから! それに恋はするものじゃなくて、落ちるものなのよ」 「ふーん……?」  最後のはよくわかんねーけど……でもそっか、そうなんだ。  別にアルファだからって、絶対にオメガを好きにならなくてもいいのか。  だいぶ間口が広がった気がした。  でも俺は、やっぱり好きになるならオメガがいいと思った。  父が母を愛したように、世界でたったひとりの自分だけのオメガを、全身全霊でアイしてみたいんだ。  もう少し希望を言うなら、世界一美人で優しいという、母のようなひとを。 (……これは、マザコンと呼ばれる内に入るんだろうか?)  俺はまた首を捻った。
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