18.勇魚センパイ

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 勇魚センパイを初めて見たときの、正直な第一印象は。 (誰? この、超絶上から目線のちっせーヤツ……) だった。 だけど、その凛とした姿に強烈な魅力を感じた俺は、それから毎日ずっと、一日中、勇魚センパイのことを考えている。 *  スマホのアラームのセットを忘れても、起こしてくれるヒトが一人もいないから初めて盛大に朝寝坊をした。昨夜読んでいた小説が面白すぎたせいだ。  電子書籍は便利だけど、部屋が暗くてもスイスイ読めてしまうのはある意味難点だと思う。 慌てて学校に向かったら、途中で他校の知らねー奴らに絡まれた。  先頭のヤツの女が俺に惚れたからゆるせねーとかなんとか言ってたケド、あんまりよく覚えてない。  そもそも俺は、年上のオネーサンと話すのは平気だけど、同級生とか歳の近い女子はどう扱っていいかわからない。 中学のときも、同級生や下級生に一日に何度も告白されて困っていた俺に、『いっそ金髪にでもしてみたら?』とアドバイスをしてくれたのは海月さんだ。  普通の女子は、コワそうな男子は近寄りがたいらしい。  その代わり、派手めな女子から声を掛けられることは増えたが、俺の態度が悪いせいかそのうちあまり寄ってこなくなった。(多分、俺が髪色のように明るい奴だと思って近づいてきたんだろう)  目論見どおり女子に話しかけられる回数はうんと減ったが、今度は変な奴らに絡まれるようになった。  でもそっちのほうが何倍もマシ。目的が分かりやすいし。  それに暴力には暴力で返せばいいから、ほんと、こっちのほうがラク。  そう思って、向かってきた奴らは全員心置きなくボコボコにしてやった。  このときも同じだった。 『おい! これ全員がおまえがやったのか?』  よく通るアルトの声に急に話しかけられて、俺はびっくりした。  もう余裕で一時間目が始まっている時間帯なのに、それは不良でもなんでもなさそうなヒトだったから余計に、だ。  第一印象は『背が小さい』。姉さんたちの誰よりも小さい。一瞬中学生かと思った。態度だけはデカい。俺が怖くないのだろうか?  だけど……ファーストコンタクトが済んだあとは、何故かあまり小さいことを感じさせない、不思議なヒトだった。  背筋をぴんと伸ばして、一見コワイと言われる俺に対しても堂々と話しかけてくる。  よく見れば、同じ学校のひとだった。しかも3年生。俺より二つも年上。  それでその人の持つ、妙な貫禄の理由が分かった。  そのひとは何故か俺のことを面白そうに眺めながら、九条勇魚(くじょういさな)と名乗った。
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