20.だから、じゃない

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でも、無意識だけど家にまで呼んでもらったんだから、俺はかなりライバルたちに差をつけている気がする。  そう思うと、気分が良かった。  シャチよりクジラの方が好きだけど、シャチも可愛いから好きだって言ってもらえたのも、なんだか嬉しかった。 俺、本物のシャチじゃないのにな……。 勇魚センパイにクジラ派だって言われたとき、俺はそんなにガッカリした顔をしてたんだろうか? 勇魚センパイは笑っていた。童顔なのもあるケド、笑うと一層幼く見えて、凄くカワイイと思った。 胸がギュッと、苦しくなる。 勇魚センパイはカッコイイのにカワイイ。 俺は今まで色んな女性オメガと会ったことがあるけど、勇魚センパイのようにカッコよくてカワイイヒトには会ったことがない。 つまり、勇魚センパイは最強のオメガってコト……?  勇魚センパイのオカーサンが作った美味しいカレーをご馳走になって、その後少しだけオシャベリをして、俺が『そろそろ帰ります』って言うと。 『もう遅いし泊まってけば? 今日は親、夜勤でいないから気ィ遣わなくていいし』 急に泊まりに誘われて、めちゃくちゃ心が揺れたけど。  ……さすがに好きなヒトと朝まで二人きりで、何もしない自信がなかったから(大事にはしたいけど、それとこれとはベツモノだ)キチンと断った。  もちろん、勇魚センパイにそういう気が全くないことは分かってるケド! 『い、イエ。帰ります……』 『そうか? じゃあ俺のチャリ貸してやるよ。明日学校で受け取るから乗ってこいよな。じゃ、気を付けて帰れよ』 『ハイ』  何気に、明日も会ってもらえるっていう約束が嬉しい。 『おやすみ』 『オヤスミナサイ』  俺がマンションの自分の部屋に帰ってきたのは、もうかなり遅い時間だったけど、次の日はアラームをセットしてちゃんと早起きした。  勇魚センパイのオカーサンは午前9時ごろに帰ってくるって言ってたから、早朝なら何時に行っても多分大丈夫なハズ。 ふつーは早朝に突撃されたらもの凄くメイワクなんだろうけど、浮かれていた俺の頭はそこまで考えることができなかった。 それに、勇魚センパイは優しいから、メイワクだったとしても俺を優しく(厳しく?)受け入れてくれるだろう。  って、勝手な期待をして。  そんなウキウキした気持ちで、俺は勇魚センパイの家のインターホンを鳴らした。 「勇魚センパイ……?」  まさか勇魚センパイにヒートが起こってるなんて、そんなこと予想もしていなかった。  そして俺は、朝っぱらから自分の理性と戦うことになったのだ。
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