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「先生?どうしました?」
「勘違いしないでほしいんだけど。引っ越したとしても転校したとしても、それで自由まで奪われるわけじゃないんだよ?その気になれば、キミはどこへだっていける」
「そうなんですかね……?」
世界は狭い。家と学校と不仲な両親の間。それだけで世界は回ってると思っていた。だけど確かに今日、脇にそれた畑にはヒマワリが咲いていて、眩しく私を照らしてきた。
「全国津々浦々。世界は広いよ?だから、あんまり肩肘はらずに。そうだな、散歩するつもりで生きたらいい」
「散歩……?散歩なんて、する意味ありますか?」
小さな子どもを諭すように、河本先生は優しく笑った。
「楽しめれば意味はあるね。でもキミがこれから歩く散歩道を、いつか誰かに届けられたらもっといいよ」
「届ける?」
「知ってもらうんだ。道を届けられた人はきっと、また歩けるようになるから」
夏の日差しが眩しい。ヒマワリが眩しい。私、もっと色々なところに行きたい。縛られたくない。
「はい。歩きたいし、届けたいです。私の散歩道」
みるみる心が明るくなって。まるで真夏のヒマワリ畑みたいに元気がチャージされていく。それを心に感じて、私は密かに頷いた。
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