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「おい朔!松木朔!いるんだろ!?今日こそ高校行くぞ!」
蝉の声をかき消すほどの怒鳴り声。毎朝毎朝、ウザいったらない。自分の部屋のカーテンを少しだけめくってみると、玄関先で幼馴染の太一がこちらを見上げて大きく手を振っている。
「俺たち来年はもう受験生なんだぞ!?それにバスケ部の奴らだって心配してんだぞっ!」
部活名が出たところで俺はきつくカーテンを閉め、そのままベッドに潜り込んで耳をふさぐ。お前はいいよな。毎回スタメンで、既に強豪大学から推薦の話まできてるんだってな。俺なんか予選の時点で盛大に足首捻って選手生命終了だ。
「あ!あとなー!」
なんなんだよっ!もう受験とかバスケとかの話はたくさんだ。
「職業体験学習だけどな!」
は?職業体験?
「必修科目だろっ!どこも行ってないのお前だけだからって、担任から行き先候補のプリント預かってたんだった!」
行かねーよ。こっちは引きこもり生活2ヶ月目だぞ?
「ポスト入れとくから読めよ!いいな?確かに届けたからな!で、どこだか知らんが行ってこいよー!」
しばらくしてあいつの声が聞こえなくなったので、俺はこっそりとポストの前まで移動する。親に見つかるとやっかいだし、さっさと捨ててしまおう。二つ折りのその用紙を、とりあえず手にとって開いてみた。
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