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「いい景色だろ?この辺は前からちょっとした観光地として有名なんだ」
「観光地?こんなに田舎なのに?」
「里山の景色に酔いしれて、山の幸に舌鼓を打つ。いい夏休みの過ごし方だと思わないかい?」
「夏休み……。いまいちピンとこないです」
気づけば明日から夏休み。終業式当日に職業体験なんてよく高校が許したなと思ったが、どうせ登校拒否中なんだし関係ないだろうという判断かもしれない。
「キミっていくつだっけ?」
「17歳ですけど」
「若いね。じゃあ今日はヒマワリ畑の『ぐるぐる迷路』というのに行ってみようか。子ども達に大人気なんだ」
「それって小学生以下の子どもなんじゃ?」
高校2年生の俺が手放しでそれを楽しめるのかかなり微妙だった。
「もしかして。足が辛い?」
「いや別に。普通に歩いたり走ったりはできますんで」
「じゃあ決まりだ。ちょっと暑いけどヒマワリが連なる様子は圧巻だよ。写真も撮りたいし、いいだろ?」
添花さんは大きなカメラを首にかけながら笑う。いいだろ?と聞きつつ、もう行く気満々だ。
「そりゃ、あなたの取材なんで。俺はどこに行ってもいいですけど」
「やったね。ああほら、もうすぐ駅だよ。とりあえず荷物持ちと駅前ラックのパンフレット収集をお願いできるかな?」
「了解です」
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