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「もちろん景色も撮ってるさ。でも太陽光を浴びて満面の笑みを浮かべる少年なんて、絵になるじゃないか」
満面の笑みなんて浮かべてないけど。でも、抵抗するのも面倒だ。大人しくそのままのポーズでシャッターを切られていると、やがて満足したような添花さんは歯を見せて笑った。それから辺りをキョロキョロと見回して、数本ある道の右端を指さす。
「さてと。こっちの道を曲がればゴールにたどり着くね」
「よくわかりますね?」
「ああまあ、アレの方向だよ」
細長い人差し指の先は太陽だった。かなり原始的な方法で方向を定めてるんだなと動揺しつつ、本当にゴールへ続いていた道を歩ききると、彼女はもうバス停へと向かって歩いていく。
「さあ、次に行くよ。次のバスまで15分くらいかぁ」
呟きながら自販機でブラックコーヒーのペットボトルを買った添花さんは、それを俺に渡そうとしてくるので慌てて首を横に振る。
「いやいや、俺こんな苦いの飲めません」
「そうなの?まあ大人の味ってやつか。じゃあフルーツジュースでいい?」
甘いものもそんなに飲まないんだけど。でもお茶なら水筒に入ってるし、ジュースにも少し興味があったのでそれにしてもらった。
「うわっ、結構甘い」
なんとなく癖になるジュースを一気飲みすると、もうバスがやってきたので連れ立って乗る。そして次の停留所で降りてからは、それはもうあちこち細かく移動して回った。
小さな神社、雑貨屋、和菓子屋、喫茶店、レトロな遊具が並ぶ公園、廃校になった高校をリノベーションしたキャンプ場と売店など。
どこも人がまばらで、遊歩道で繋がったそれら一体は、のんびりとした時間の流れを共有しているのだけど……。
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