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「そうだ、これあげるよ。さっきの迷路で貰ったんだった。参加賞だってさ」
撮影を終えた添花さんから、何かを差し出された。見るとヒマワリの押し花。いや、それを使った栞だった。
「手作り感が満載ですね」
「可愛いだろ?地元の学生や子ども会が作ってるんだよ」
受け取った栞に、思わず頬が緩んだ。思わぬ贈り物をもらったみたいにほんのりと嬉しい。
「さてと。そろそろ帰らないとね」
職業体験の終わりを予期した俺は慌ててその細腕を掴む。
「ん?疲れたかな?」
「あの。『そえサンポ』っていいと思います」
「あれ?読んだことあったの?」
「いいえ。でも帰ったら絶対に読みます。少しだけど添花さんと一緒にいて、いい本だってわかったから」
「そう。嬉しいことだね」
「だから、もっと知ってほしいです。俺はもうバスケ選手は目指せないけど。でも散歩することの楽しさとか、気楽さとか。いつか俺も色んな人に届けたいと思った」
「うん、じゃあいつか届けてね。いい職業体験になったなら何よりだ」
添花さんは俺の手を取って握手してくれる。それからこの旅の終わりを告げるような憂いある笑顔になる。
「おかげで私も楽しい散歩道を歩けたよ。だから、ありがとう」
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