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こんな取り留めもない話をしていても、全然盛り上がらない私たち。今、私たちが少々アンニュイな雰囲気なのは、一つ心配事があるからです。
先日の夜会の後、私がヒロインのドレスを汚したという噂が広まっています。誰が広めたのかは分かりませんが、殿下……いいえ、レオ様曰く、レーマン伯爵が広めているという話があるそうです。攻略対象全ルート廃止したにも関わらず、やはり私は悪役令嬢になる道しか残されていないのかと、少し心配ですね。
「そういえば、アランを正式にコレットの護衛に付けた」
「アランを? まだ学生なのに?」
「だから騎士団に仮入団させたんだよ。この前の夜会みたいに、メイがいつ面倒なことを仕掛けてくるか分からないだろ。存分にアランを頼ってくれていいから」
初めはよそよそしかった円卓会議メンバーともすっかり打ち解けたレオ様。将来、レオ様を支えてくれるメンバーたちですものね。お互いに支え合って、信頼関係が築いていけると良いですね。
「……レオ様、ありがとうございます。アランがいてくれると心強いです」
「コレット。じゃあ俺へのご褒美に、手繋いでくれる?」
レオ様がテーブルに片手で頬杖を付いて、もう一方の手をこちらに差し出します。
「レオ様。友達は手を繋ぎませんよ」
「じゃあ、どうしたら繋いでくれる?」
どうしたら手を繋ぐか? 頭で色々考えます。握手の時? ダンスの時? いえ、もっと日常的に手を繋ぐ場面ってありますか? 悩みますね。
「……じゃあいいや。コレットが俺と手を繋ぎたい時が来たら言って」
レオ様と手を繋ぎたいと思うなんて……私に、いつかそんな日が来るのでしょうか。
最近はレオ様に睨まれたりこき使われたりすることはなくなりました。でもレオ様に、私のことを好きだのキレイだの言われると、背筋がゾワッとします。
お兄様の言葉を使うと、ゼロに対して百で来られている感じ。
こうして、取り止めもない話をしている時が一番楽です。ずっとこのままがいいな。
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