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ムーンライトフラワーは、夏至の日の夜に一日だけ咲く一夜花。これからどんどんつぼみが大きくなっていくのかもしれませんね。
「そうか。僕もすごくこの花に興味があってね。詳しく研究したいと思っているんだけど、この鉢を借りることってできるかな?」
「この鉢を? どうかしら……レオ様がこの鉢にやけに拘っているから、私の部屋から出すと怒ると思うの」
間違いないです。必死の形相で私の部屋にこの鉢をセッティングしに来ましたからね。マティアスに鉢を渡したなんて知られたら、きっと私はまた怒られるでしょう。
陛下からも怒られ、レオ様からも怒られ……。
王家の皆様からこんなに嫌われる王太子妃候補って、この世界を探しても私だけだと思いますよ。
「そうか、残念。ところでコレット、何だか顔が暗いけど大丈夫? 」
「やっぱりそうかしら? 私がメイ様に嫌がらせをしているっていう噂のせいで、陛下に怒られちゃって」
「陛下に怒られただって? それはマズイな」
「ええ。レオ様の婚約者として大分お恥ずかしい状況だと言うのは、自分でも分かっているわ」
お恥ずかしいで済んだら、警察は要らんですよ。国王陛下ははっきり言いました。「この婚約も見直さなければならない」って。
せっかく攻略対象の全ルートを潰して、レオ様とも向き合って。
これから二人でゼロから百まで階段を少しずつ登っていこうかという今になって、婚約破棄の四文字がチラつく状況になってしまいました。
元々私は、ヒロインが王太子ルートを選ぶように望んでいたはず。それなのに、いざこうして婚約破棄が現実のものになると、急に不安になって落ち込んで。本当に私って都合がいい最低の女ですね。
仮にもレオ様の婚約者という立場にありながらエリオット様に片思いしたり、こともあろうかそれをレオ様に知られてしまったり。
挙句の果てに、レオ様が私のことを好きだと言ってくれたのに「お友達から始めましょう」だなんて。
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