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噴水の縁石に並んで座る、見覚えのある二人。
ピンク色のふんわりとしたヘアスタイルの女性は、間違いなくメイ・レーマン伯爵令嬢です。そして、彼女の膝丈のワンピースから伸びた足を手で触れながらメイ様と見つめ合っているのは、見間違うはずのないあの方。
私と八年間も婚約している、あのレオナルド・ブランデール殿下でした。
「レオ様……なんで?」
「コレット、分かったでしょ。レオはコレットに都合の良いことを言っておいて、結局はヒロインを王太子ルートに誘いこもうとしてるんだ」
目を疑い、呆然とする私の視線の先で、レオ様はメイ様の腰をしっかりと抱き、二人で馬車に乗り込んで行きます。
こんな公衆の面前で足に触れたり、あんな近い距離で抱き合ったり。
あのお二人の関係は、一体どうなってしまったの?
「マティアス、あれは何? レオ様は公務が忙しいのではなかったのかしら」
「……ごめん、コレット。僕の口からはとてもじゃないけど言えなかったんだ。メイが、レオの新しい婚約者になるんだよ」
「どうして? 私、国王陛下にもちゃんと説明したわ。私はメイ様のことをイジメたりしてないって。誤解だって」
「夜会でも学園でも、コレットがメイをイジメているところを見たという人が大勢いるんだ。婚約者として不適切だと思われているんじゃないかな。だから、コレットが王宮を訪ねても、レオに取り次いでもらえなかったんだと思う」
マティアスの言葉が、胸にザクザクと刺さります。
ヒロインは、王太子ルートを選んだ。
そして王太子であるレオ様も、結局は私ではなくメイ様を選んだのね。
でも、私はレオ様を止められるような立場ではありません。
レオ様の婚約者でありながらエリオット様に惹かれ、レオ様をないがしろにし、挙句の果てに「友達から始めましょう」なんてふざけたことを言いました。
未来の王太子妃として、不適切だと言われたって仕方がない。
――婚約破棄。
子供の頃から幾度となく想像していた未来。
もう訪れないと思っていた悲しい未来が、突然現実のものとして目の前に降ってきました。
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