第1話 私はどうやら悪役令嬢のようです

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第1話 私はどうやら悪役令嬢のようです

(湖ってこんなに深かったのね。私ったらもしかして……このまま溺れて死ぬのかな?)  私の体はゆっくりと、湖の底に落ちていきます。  手足を動かそうとしても、水の中では何もかもがスローモーションのよう。    ――ん? スローモーション? そんな言葉、この世界にあったっけ?    呑気にそんなことを考えている場合じゃありません。  私は今、湖に落ちて溺れているのですから。 (お父様、お母様、そしてお兄様。たった七年の人生だったけど、ありがとうございました。コレットはこのまま溺れて死にます――)  そう覚悟を決めた瞬間、私が口から吐き出した空気の泡の向こうから、誰かの手がこちらにスッと伸びて来ます。  決死の思いでその手を掴むと、体ごとふんわりと水面に引き上げられました。 「ゲホッ! ごほっ」 「コレット! 大丈夫?!」  湖に落ちて溺れかけた私を助けてくれた男の子が、咳き込む私の背中をポンポンと叩いてくれます。 (うわぁ、ちょっと待ってくださいよ……)  ゲホゲホしながら横にいる男の子の顔を見て、私は確信しました。どうやら私は、溺れたショックで思い出してしまったようですね。  ……日本人として、のほほんと生活していた、を!!
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