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全ての料理が出来上がり、所狭しと食べ物が並んだテーブルの前に座った孝臣は、「いただきます」と手を合わせた。
一番手前にあった、茄子とピーマンの肉味噌炒めを口に頬張る。
誰も見ていないのをいいことに、大口を開けて頬袋いっぱいに茄子を詰め込む孝臣は、分かりやすく目を輝かせた。
茄子とピーマンにもしっかり味噌の味が絡んでいる。
(うま……)
自画自賛しながら箸を動かす。
部屋に流れる歌番組を聞きながら、キッチンで茶碗にお米を盛り直す。
作った料理も、買ったお惣菜も全て孝臣の腹に消えた。
満足そうにお腹を撫でた孝臣は、「ごちそうさまでした」と手を合わせた。
ここから片付けをするのは面倒だ。
作るのは好きだが、片付けは嫌い。
(……もう少しあとでもいいか)
孝臣は流し台に積まれた食器からそっと視線を外し、冷蔵庫の中からチョコ菓子を出した。
それを食べながら歌番組を見るのだ。
片付けはお風呂上りでもいいだろう。
そうやって、お風呂上りは眠くなる孝臣は、欠伸を噛み殺しながら食器洗いをするのだろう。過去にそれで何枚手を滑らせて食器を割ったか分からない。
(……明日の朝は何食べよう)
今さっき晩ご飯を食べたばかりだというのに、もう明日の朝食について考えながら、孝臣は片付けが残っているという現実からしばし逃げた。
口に放ったチョコレートの甘さが口いっぱいに広がった。
了
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