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17時45分を少し過ぎた時間。
宇川孝臣は、パソコンのキーボードの上で忙しなく動かしていた手を止めた。
何を考えているのか分からない無表情で仕事をこなす彼はの傍には、あまり人が寄り付かない。涼し気な釣り目のせいか、更に人を怖がらせてしまう。
普段無口な孝臣に好き好んで話しかけてくるような人はいない。
しかし孝臣はこれっぽっちも気にしていなかった。静かだからこそ仕事が捗ると言うもの。
孝臣は近づくなオーラを放ちながら、最終チェックのために画面に目を走らせていた。
(どこにも問題はないな)
確認ができれば、あとは印刷するだけ。これで明日の会議の資料は完成。
今日も定時で上がれそうだ。
孝臣は資料が印刷されるのを待つ間、今日の夜ご飯について考える。
その間も無表情なため、傍から見れば何を考えているのか分からない。まさか今夜のご飯のために、近所のスーパーで何が安かったかを思い出してるとは誰も思わないだろう。
(野菜が安ければいいな。野菜炒め……。あ、茄子が食べたいかも。茄子の天ぷら……いや、帰ってから天ぷらはちょっと。それは休みの日にするとして、今日の所は麻婆茄子か……いやでも)
蒸した茄子にポン酢やごま油で味付けしてネギや鰹節をまぶすか、それとも豚バラ肉と炒めるか……と次々と茄子料理を考えていると、孝臣のお腹がぐうぅぅぅと鳴った。
誰にも聞かれていないだろうかと周りを見る。
真横に後輩の女性が座っていた。しかもばっちり目が合ってしまった。
「……」
「……」
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