秘密の関係なんて不安しかない！と叫びたい

出向することになりました

「どうしたの、今日は何か元気が無いわね」
　エステ施術中、御贔屓してくださっている宮本様からご指摘を受けてしまった。

「失礼致しました。何かお気づきの事がございましたでしょうか」
　いつも通りに施術をしているつもりだったけど、私の不安や憂鬱さが宮本様に伝わってしまったのだろうか。

「いいえ。いつも通り気持ちの良いエステだわ。でも、ちょっと声のトーンが違うかな、と思って」
　本来ならお客様に気を遣わせるようなことがあってはいけないが、今の私にはそのお気遣いがとても嬉しく感じ、目頭が熱くなった。

「後程ご挨拶をさせていただこうと思っていたのですが、私しばらく別の店舗に出向することになりまして。宮本様には大変お世話になって、このまま私が担当させていただきたいと思うのですが、次回より別のセラピストが担当させていただくことになります」

「あらあら。それは残念ね。でも出向という事は戻ってくるのでしょう。私自身ももう歳だし、いつまでエステなんて受けていられるかわからないけど、待っているから頑張ってきて頂戴」と宮本様の優しいお声。
　そのお声に涙が溢れ、「す、すみません……」と一時施術を中断することになってしまった。

　宮本様のような存在は本当に嬉しい、有難い。
　少し不貞腐れていた私の心を癒してくれて、「小川店でも頑張ろう！」という気持ちにしてくれた。