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出向先の小川店のサロンはウチよりも少し規模が大きく、休暇に入るセラピストに代わって私を含め3人のセラピストが代理として呼ばれた。
私は昼間の担当にしてもらえたので1日2~3人の施術が入る。
定休日がない代わりに週に隔日2日お休みを貰えるので、その日はウチのサロンの様子を見に行こうと思っていた。
だけど最初の1ヶ月は慣れない環境の為か、疲労がたまり休養を優先した。疲れた顔でお客様の癒しの時間を提供するなんて、セラピスト失格だからだ。
私がサロンに行けない代わりに、オーナーが3日に1回は小川店に顔を出してくれる。お正月から春にかけて毎年オーナは忙しくて本当に一言二言話すだけの日もあるけど、それでも私に会いに来てくれるのが本当に嬉しかった。
小川店に来て3ヶ月が経とうとする頃。
次のご予約まで少し時間があるので一旦家に帰ろうかと思っていた時にオーナーが小川店に来てくれたので、近くの公園でデートをすることになった。
桜が満開で、付き合い始めて1年経ったことに気がついた。
「事務で困っていることはありませんか?」
まず最初に話す内容が仕事だなんて色気が無いな、と自分に呆れる。
「大丈夫…と言いたいところだけど、やっぱり正直厳しくてね。実は……ひとり事務員を臨時で雇ったんだよ」少し言いにくそうに話すオーナー。
「……?それって最近ですか?」
「いや、2か月…もうちょっと前くらいかな。別に隠していたわけではないけど、俺が出来るって言い張った手前、言いにくくて」
オーナーは私が怪訝な顔をしていることに気がつき「唯が戻ってくるまでの契約だよ。やっぱり唯が事務をしてくれる方が安心できるし」と弁解する。
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