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「だけど今は、唯はこっちのサロンの事は気にせず、小川店でセラピストとして頑張ってくれるかな。小川店長が唯はよく頑張ってくれるから助かっているって言っていたよ。このまま移籍してほしいくらいだって言っていたから、唯はウチの大事なセラピスト兼事務員ですって言っておいたよ」とオーナー。
大事な彼女、とは言ってくれないんだ……。
「いえ、由紀奈さんに先日お会いした時、事務の事は言っていなかったからちょっと驚いて……」
確かにさっきオーナーの話を聞いて、その事務員に自分の居場所を奪われたような感覚に陥った。正直、悲しい。
そして事務員を2か月も前から雇っている、という事に驚いた。
私自身何度もサロンに向かっているけど、その間に一度もその事務員にお会いしていないからだ。
事務から離れて1ヶ月が経つ頃、流石に様子が気になっていた。
その頃から私は休日の度に昼間サロンへ向かい、事務の仕事のチェックをしに行っていた。
サロンの鍵は一旦返却したので、セラピストの出勤と共にサロンへ入れてもらっていた。
商品の注文や仕分けなど最低限の業務はされているようだけど、備品のチェックが甘く幾つか欠品しているものがあったり、展示期間が終了している商品をディスプレイしたままだったりしていた。
そして毎度段ボールや梱包材が大量に積まれており、流石にここまで手は回らないかと思いながら片づける。時々未開封や中身が入ったままの段ボールを見つけては面食らいながらも整理する。そして確定申告用ソフトへのデータ入力もほぼ手つかずの為、それも全て入力して帰宅する。
忙しいオーナーのフォローが出来て、自分が誇らしいと感じていた。
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