策略に乗せられました

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 オーナーと会えないまま3週間も経つと、冷却どころか寂しさが辛かった。 『会いたい』なんてメールを送ろうにも、オーナーが忙しいのはわかっているので躊躇する。  元々『おはよう』『おやすみ』等のメールのやり取りすら無く、いつだってお誘いメールは突然だ。 『今日、一緒に食事する?』  昼休憩の時、そんなメールの文面に私は迷いもなく『16時までの勤務なので大丈夫です!』と返信する。  あぁ、服はこのままではダメだな。一回家に帰らないと。髪もメイクも直さなきゃ。16時じゃなくて16時半って言えばよかったかな。シャワーも浴びたい。嫌だ、時間が足りない!なんてひとり浮かれている自分に気がついた。 「唯、最近サロンに顔出したりしている?」  オーナーがメインディッシュを食べ終えてデザートを待つ間に、真剣な表情で聞いてきた。 「最近…ですか?ここ数週間は行っていません」  私がリストアップしておいた作業を夕夏さんが実行してくれているか気になっていたけど、敢えて心を鬼にして耐えていた。 「じゃあ、セラピストに事務員の事話した?」少し強い口調で、私の目をじっと見つめる。まるで尋問されているようだ。
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