策略に乗せられました

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 デザートとコーヒーが運ばれ、話は一時中断した。 「頻繁ではないけど、発注した商品が届かないと思っていたら既に届いていて隠されていたり、受注伝票が書き換えられていたりするらしくて。唯が事務をしてくれていた時は、そんな事無かったよね」  オーナーはゆっくり落ち着いた声で話しながら、コーヒーにミルクを注ぎ、静かに混ぜる。  あれって誰かの嫌がらせだったの…?  いや、セラピストの方達がそんな子供染みた事をするとは思えない。  私は冷めていくコーヒーを見つめながら、考え込む。 「普通に…事務の方の勘違いでは無いのですか?」  どう考えてもズボラな方のようだし、それを言い訳にしているのでは無いかと思えてきた。 「いや、だとしたらあんなに精神的に参ったりしないだろうな。最近は最低限の業務しか出来ないようだし」  ―――は?  それって私がここ数週間、フォローするのをやめたから事務が滞ってきただけなのでは?  結局彼女はお願いした業務を放棄しているということなのか。  ……あ、あれ?  ふと、オーナーから最初の質問が気になった。 「もしかしてオーナー、私も容疑者のひとりですか?」  私の質問にオーナーはコーヒーを飲む手を止めた。
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