大好きです、ありがとう

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大好きです、ありがとう

 世間は明後日からGW(ゴールデンウィーク)で旅行だ、観光だと言い、その間は割とエステサロンは暇になるので私はお休みを頂けるらしい。GWが明けると忙しいらしいが…。  だけど今の私にGWの予定なんて全くない。  オーナーと食事して以来3日間、お互いに連絡を取り合う事は無かった。  ひょっとしてこのまま自然消滅なのかもしれない、そう思うと身を切られるような感覚に陥る。 「どうしたの?早坂さん、最近元気ないわねぇ」と小川店の店長が控室で声をかけてきた。 「すみません。ちょっと落ち込むことがあって……」そう言いかけては涙が出そうになる。  だめだ、きっと今私の目と鼻は真っ赤になっている。  そう思って顔を背けた。 「……早坂さんさえよければ、来年セラピストが復帰した後もずっとウチの店で働かない?ほら、実家も近いでしょ。事務の方だって、手伝ってもらえると助かるわ」 「それは……」  ―――それはオーナーからの要望ですか?……私がオーナーの元に戻らなくていいように。  今までの私なら「身に余るほどの光栄です。だけど私の居場所はあのサロンなので」と言ってお断りをしていただろう。  だけど今の私には、甘いお誘い。  現実から、オーナーから逃げるための口実になる。  オーナーがそれを望むなら、それでいい。 「……少し考えさせてください」 「ええ、お願いね。また伺うわね」と店長はサロンの方へ戻っていった。  帰り支度をしている頃『今から会える?』とメールが届いた。  セラピストの由紀奈さんからだった。
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