大好きです、ありがとう

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「ごめんね、急に呼び出して」  小川店の近くの居酒屋に由紀奈さんがやってきた。 「いえ、どうかしましたか?」  由紀奈さんは「明日は定休日だし」と生ビールをジョッキで注文した。 「あのね、唯ちゃんが以前言っていた『新しい事務員』、誰だかわかったのよ」温かいおしぼりで手を拭きながら、由紀奈さんが言った。 「オーナーの…元カノさんですよね」 「そう!なんだ、知っていたの!?もうあり得ないわよね、オーナー、頭の中お花畑過ぎ。唯ちゃんの代わりを普通あの女に頼む!?」  由紀奈さんはまだアルコールが入っていないはずだけど、一気にヒートアップした。 「でも、事務に携わっていた方なのですよね。お店の事も良く知っているというか…」 「あの女ね、自分のミスを全~部、人のせいにするの。オーナーの彼女っていう立場を良いことに、我儘言い放題やりたい放題で……」と、運ばれてきたビールを受け取り、グイッとひと飲みする。 「私がオーナーを好きだって知っていて、わざと見せつけてきたりしてさ…!」  その言葉にビクッと反応した私に、由紀奈さんが気付いた。 「唯ちゃんは良いの。唯ちゃんは仕事に対して一生懸命で、私達にもよく気を配ってくれて、何よりオーナーの事が大好きで、オーナーも唯ちゃんの事が大好きで……私はとっくに諦めているから、もうさっさとひっつけってずっと思っていたのよ。それでやっと付き合い始めたんだなと思っていたのに……」  あ、あれ。バレていたんだ。
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