大好きです、ありがとう

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「え、ゆ、由紀奈さん。いつから気付いていたんですか?」 「えー…唯ちゃんがセラピストデビューした時くらい?オーナーのサロンに顔を出す回数が増えたし、こっそり事務室でいちゃついているし…。皆で『バレバレだよね。でもちゃんと女を見る目があったんだね』って言っていたのよ」  それって、付き合ってすぐからじゃん!  アルコールは入っていない私の顔が一気に真っ赤になったのがわかった。  だけど、皆が気を遣ってくれていたのかと思うと嬉しかった。 「後から知ったんだけどね。昔あの女、オーナーのメイクの仕事に同行して男漁りしていたのよ。そこで出会った新人俳優と付き合うためにオーナーと別れたの。しばらくしたらその男とも別れたみたいだけど、またオーナーと連絡を取るなんて図太過ぎるでしょ」  真実を知らされ、ぽかんとしている私の頭を由紀奈さんはヨシヨシと撫でる。 「さっきね、オーナーに真実をぶちまけてきたんだ。目を覚ませってね。私達では何の力にもなれないかもしれないけど、セラピスト全員唯ちゃんが大好きで、ずっと応援しているからね。何かあったら話を聞くから」  由紀奈さんのその言葉にぶわっと込み上げてきて涙が溢れた。 「ありがとうございます、ありがとうございます……」  私は今回の事の一部始終を由紀奈さんに話した。  憶測の部分もあるので、それは一応「憶測だけど」と念を押して。 「オーナーは一瞬でも唯ちゃんを疑うなんて、何考えているのよ!」と大変ご立腹の由紀奈さん。  話を聞いてもらえたおかげで私はその夜、久しぶりにぐっすり眠ることが出来た。  皆、ありがとう。私も大好きです。
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