絶対に許しません!

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「オーナー、痛い…」 「嫌だ。出向は1年で終わり。俺には唯が必要なんだ」  嫌って…。 「それはどういう意味ですか?事務員としてですか?セラピストとしてですか?私は所詮誰かの代わりであって、誰でも代われる存在なんです」 「違う。唯は唯だ。俺にとって唯一無二の…」  オーナーが言葉を詰まらす。  私は次の言葉を期待するけど、続かず黙られてしまった。 「唯一無二の、何ですか」  妙に強気な私は、正面を向いたままのオーナーの顔を覗き込む。 「……あぁ!くそっ!」と吐き捨て、オーナーは私を抱きしめた。 「唯一無二の彼女だ。ごめん、忙しさを理由に唯が傷ついていた事に気付こうとしなかった」  彼女。やっと言ってもらえた。  私は緊張が緩み、全身の力が抜けて涙が溢れた。 「じゃあ、移籍の話は…オーナーが店長にお願いしたんじゃないんですね」 「そんなことしないって、以前も言ったし今回も断った。唯が俺に幻滅して移籍したいって言っても、絶対に離さない。離したくないから」と抱きしめる腕の力を強めてくる。 「夕夏の事は本当にごめん。付き合いで行ったクラブで夕夏に偶然会って、別れた彼氏の借金を返済するために水商売をしているって聞いたから…少しでも手助けになればと思ったんだ。実はそれすら嘘だったって、今日調べがついたんだ。唯が人知れず事務の仕事を手伝ってくれていたのを良い事に、俺にミスや怠慢を叱咤された時に咄嗟にあんな嘘をついたって言っていたよ」  あらら、夕夏さん。暴露しちゃったのですね。
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