絶対に許しません!

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 長い沈黙の後、ふと「名前…」とオーナーが耳元で囁く。 「え?」 「もう皆、俺たちの関係を知っているし『オーナー』じゃなくてもいいはずだよな」と私の顔を覗き込む。  あぁ、そう言えばそんな事を言っていたわ、私。 「ら、来斗…さん」慣れていないせいか、照れが入ってしまう。 「え、さん付け?」と不貞腐れるオーナー。  だって9歳も年上ですよ!  私が躊躇していると「来斗、話はついた!?」と親店の店長であるオーナーの母親が部屋に入ってきた。 「あぁ…いや、小川店長がどこかに行ったから…」とそそくさと部屋から退出するオーナー、いや来斗。  オーナーの母親は「ウチの愚息が不甲斐ないせいで、大変だったみたいね」と私に頭を下げる。 「いえ、誤解も解けて安心しました」  そう言う私のそばに寄り、含み笑いをしながら彼女は言った。 「ごめんなさいね、貴方を出向させるよう提案したのは私なの。お詫びにあなたが戻るまで事務員はウチから派遣するわね。あとこれ、絶対にヒミツよ。来斗ね、貴方を出向させる時も移籍の話が出た時も、子供みたいにゴネていたのよ。いつまでも愚痴愚痴言っていたわ」  それを聞いて私は吹きだし、ちょっとだけ来斗を許そうかなと思えてしまった。   了
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