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そして朝オーナーの部屋で目覚め、身体の違和感から昨夜の出来事は夢じゃなかったと実感する。
「ずっと好きだったよ」って何度も囁いてくれて、身体より心の方が何度も絶頂に達し涙を流していた。
だけど……。
「秘密にするって、どういう事ですか?」
「あ、いや、やっぱり雇用関係でこうなると…他の従業員に示しがつかないから。いや、別にやましいことでは無いんだけど…」
確かにオーナーの恋人が同じ職場にいる、なんて他のセラピストは仕事がしにくいと感じるだろう。
だけどこのまま仕事を続ける以上、状況が好転する事はあるのだろうか。
一抹の不安がよぎる。
「今日は定休日だけど、親店で店長ミーティング、その後メイクの仕事が入っているからあと1時間で出られるかな。一緒にいられなくてごめん。今度ゆっくり話そう。とりあえず今日は車で送っていくよ」
オーナーの母親の化粧品販売店の傘下にはウチ以外にもサロンや販売店があって、各店舗の店長の集まる日が月に1回ある。
私が昨日の自前の服に着替え終わると、オーナーが手招きをして座椅子に私を座らせる。
「これから人前に出る仕事をするわけだから、メイクもキチンと覚えていこうね」と私にメイクを施していく。
大きな手なのに、繊細で優しい手つき。
この手に私は昨夜触れられていたのだと気がつき、急に恥ずかしくなってきた。
「どうした?顔が…引きつっているぞ」オーナーが不思議な顔をする。
「な、何でもないです。ちょっと…くすぐったくって」
苦しい言い訳をする私にオーナーは微笑み「リップ塗ると出来ないから」と言って優しいキスを何度も落とす。
―――時間、大丈夫ですか?
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