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「ぼ、僕のことからかってたんですか! 酷いです!」
「ごめんごめん。そんなつもりなかったんだけど、必死にお花見を妨害しようとする君がかわいかったから、つい」
「最初から本当のこと言ってくれればよかったじゃないですか! 僕の誕生日だから丸付けてたって!」
「だって、なんか浮かれてるみたいで恥ずかしかったんだもん。それにお祝いはサプライズにしたかったし」
「もう! 嬉しいですけどぉ! もうっ!」
「はいはい。で、お花見行くの? 行かないの?」
半泣き状態の杉田くんに私はもう一度右手を差し出す。
もう意地悪はおしまい。これまでツンツンモードで散々からかっちゃった分、今日はいっぱい幸せになってもらわなきゃ。
「行きますよぉ! 行けばいいんでしょ!」
「あれ? お花見なんて、『風情を解さない愚者による蛮行』なんじゃなかったっけ?」
「もう! もーうっ! また意地悪言ってますこの人!」
ありゃ。もしかしたらクセになっちゃったかも。
これは先が思いやられるなと自分自身に呆れた後、無理やり杉田くんの手を取り、今度こそ混じりっけのない素直な「大好き」をこの言葉に託して贈った。
「お誕生日おめでとう。杉田くん」
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