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第9話 素直になれるひと
「谷川!」
下着姿になった私に慌てた黒須が声を荒げたけどそれを無視してそのまま口付けた。
「んっ――」
押し付けたくちびるを離して黒須と見つめ合う。黒須は固まってた、困惑してた、それもわかってたのにタガが外れた私は言ったのだ。
「出来ないなら私がする。黒須はなにもしなくていいよ、全部、私がするから。だから、私のせいにして?私に襲われたって言えばいいから」
「谷川のせいになんかできるわけねぇだろ」
「私がしたくてするんだからそれでいいじゃん、黒須はしたくないんだから!私なんかとはしたくないのに無理やり迫られてるんだから!」
「してぇし!したくないなんて一言も言ってねぇし!」
「じゃあしてよ!なんでしてくれないのぉ!してよ、したい!黒須としたいの!」
「――――っ、忘れんのはお前だろ!覚えてないのは絶対谷川の方じゃん……絶対……忘れんだろ?」
切なそうに苦しそうにそんな言葉を言って頬を撫でられた。熱い手が優しく頬を包んでそのまま引き寄せるように抱きしめられた。
「俺は忘れないし、覚えててほしい」
「……じゃあ、忘れられないくらいちゃんと抱いてよ……私の身体が覚えてられるように、ちゃんと……」
そう言ったら黒須に口を塞がれた。優しいキス、労わる様に包み込むみたいなあったかい柔らかいキスだった。触れあうだけで胸が震えて幸せだと思った。
黒須の触れる手の熱が、強さが、まとう空気どれもが肌に合うような自然で何とも言えない高揚感に包まれた。
「あ、んん、や、そ、んん」
「なんか、すごい感じやすいな……酒のせい?」
「は、ぁうっ……んん、あ!ダメダメ、イッ――」
触れる様に触られているだけで果ててしまった私に黒須は少し驚いている。
「……ごめ……私」
「気持ち良かったの?もっと奥まで触っていい?」
そんな風に優しく聞かないでほしい、黒須がしたいようにすればいいのに、そう思いながら頷いた。
「でも私、またイッちゃうと思う……」
「いいよ?何回でもイって。辛くなったら言って?」
「うん……」
素直に言われるがまま。黒須の肩に腕を回して身を預けた自分を客観的に思うんだ。
(男の人に、こんなに素直になって手を差し伸ばすの初めてかもしれない……)
そして心だけじゃなく、体も素直だった。
指だけで何回も果てる私、身体が感じ過ぎて震えが止まらなくてその快楽の中、黒須にきつく抱き締められてまた果てた。
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