第10話 熱い視線に包まれる

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第10話 熱い視線に包まれる

 何度もはしたなく感じる私を黒須がジッと見つめていた。でもその瞳はなにも嫌悪感は感じなかったが沈黙がやはり怖いから素直に打ち明けた。 「私……すごい感じやすいみたいでなんかいちいち敏感に反応しちゃうの……ごめん、気持ち悪いかも」 「酒のせいじゃないってこと?体質がってこと?」 「多分……前の人も、ちょっと引いてたの。最初はそうでもなかったけど、だんだん本当か嘘かわからないみたいになって……ほら、会う頻度が少ないからワザとらしく感じたみたい、演技してるんじゃないかって……そういうこともきっとこの結果に繋がってるんだろうなぁ」  ポツリとこぼしたら黒須に顔を持ち上げられた。 「演技?そんなん抱いてたらわかるけどな。本気で感じてるかどうかなんて」 「そう、なの?」 「実際どうなの?あんな乱れたの本気で演技なの?ワザとあんなに声あげて身体震わせられんの?」  聞かれてカァッと赤面する。直球で聞かれると困るけど黒須の顔は真剣だから誤魔化せない。 「演技なんか、できない。あんなことしてる時に」 「かわい……いや、ごめん。本音が……」 「え?」 「酒に酔ってあそこまで乱れたのかなって思ったけど、そうなんだ……あれシラフでも見れるってこと?」  また嫌がられるかもな、そんな気持ちで俯いた。黒須にまでゲンナリされるのはなんだか無性に切なかった。  黒須はいつでも私を優しく受け入れてくれたから。 「シラフの谷川抱きたいんだけど、いい?」 「――へ?」 「だから、したい、谷川とセックスしたい、今すぐしたい、いい?」 「いいって……今の聞いてしたくなったの?」 「なるだろぉ!めっちゃしたいわ、むしろどこまで乱れて感じるのか知りたい」  え。 「今度は忘れたくなるくらいしつこく抱くわ」 「え、ぅんん――!」 「なんにも忘れてほしくない、俺とのこと」 「黒須……」 「志織」  名前を呼ばれて心臓が跳ねた。真っ直ぐ見つめられて男の人に名前を呼ばれる、この行為は女の心を簡単にときめかせる。 「ずっと好きだった、ずっとそばにいて、近いのに遠くて、言えるのに言えなくて……一年前に彼氏が出来た時もう本気で諦めようって、何回も思ってでも諦めらんなくて……ダサいくらいずっと好き」  見つめられる視線が痛いほどだ。心にまで刺さる、視線が、言葉が、黒須の想いが。  この強い視線を受け止められるほどの勇気がまだ持てないけど、受け止めたい、そう思った。 「別れたばっかの女でもいいの?」 「もう付き合ってねぇじゃん、そんな男と。黙って放置してるヤツ彼氏なんて認めねぇよ」 「私なんかに黒須は釣り合わないって思ってたから……もう最初に離脱したんだよ?同期たちとの争奪戦に」 「え?何その話」 「当たり前でしょぉ?誰でも一度はときめいてるよ、黒須篤史には!!」 「一番に来いよ!真っ先に受け止めんのに!!」  怒るように言われて吹き出した。 「ずっと傍にいて好きでいてくれてありがとう……」  あの頃勘違いしかけた若かった私に言ってあげたい。勇気を出して飛び込んでみても大丈夫だよって。  黒須はきっと両手を広げて私を抱きしめてくれるからって……。
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