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第2話 もう若くないの、わたしって
最初は私も無駄にときめいたものだ。今はそんな少女漫画みたいな勘違いはしないけど。ええ、しません。そこまで若くないし勘違いするのも期待するのも嫌だしそれなりに恋愛もしている。反省もたくさんしてるんだ。
それでもときめいたのはやっぱり若かったから。
出会いは入社式。隣の席になってニコッと微笑まれて勘違いしかけても許してほしい。そんなイケメンあんまり身近にいなかったんだ。
気さくで話しやすくて、ちょっとしたことでもさりげなく声をかけてくれて、いい距離感で仲良くしてくれる。
仕事は早いし対応力もあってすぐに成果を出していた。好感度が高いから顧客の心を掴むのもうまい。安心、信頼、そこにイケメン。
黒須は営業が向いている。
社内でももちろんモテている。同期というだけで何回も恋の橋渡しを頼まれたこともある。仲良くしている同期女子は私の他にも数人いそうだけれど、まわりは私が一番仲がいいでしょ?と言ってくる。
そうかな?
黒須はそんな誰かを特別視したりしない気がするけどな、そんな風に思っていた。
誰とでも、分け隔てなく、最低の距離と安定の顔で付き合いをしている。
それは逆に誰ともそこまで馴れ合っていない、そういう風にも取れた。
約束した夜。
黒須はお酒が好きだから今日は飲んでもらおうと少し小洒落たバーを予約した。先に着いてカウンターに案内されて黒須が来るのを待っていた。
【悪い、少し遅れる】
店についてからラインが届いてそれを確認した。
出先がどこかわからない、何時ごろになるだろう。待つのは結構好きだ、だから結局彼氏ともこんなズルズル続いて待ってしまっているのだけれど。
待つのが好きでもここまできたら重症だな、そんなことを思いながら自虐気味に笑ってしまった。バーカウンターで一人うすら笑みを浮かべる女、気持ち悪いな……ハッとして周りを見渡したら三つほど離れた席にいた一人の男性にニコッと微笑まれた。
笑ってるところを見られて笑われた……恥。
愛想みたいな会釈を返して顔を逸らす。
できたらこの場を離れたいが案内された以上仕方ない。俯いていたら目の前にグラスが置かれた。
「え?」
「あちらのお客様から」
……ちょっと、どうしよう。こんなドラマみたいなことあるの?
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