Scene.01 ジンクス

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桜がまだ咲かぬ夜にて一緒に空を見ることにしました。 「やっと春休みだね」 美姫が嬉しそうに言った。 「そうだね」 一が小さく答える。 「私さ。  っていうか護となんだけど。  この春休みに旅行に行くんだ」 「え?」 一は驚く。 「ふふふふ。いいだろー?  でも、お前は連れて行ってやんないからな!」 護がそういって一の頭をくしゃりと撫でる。 「いや、連れて行けとは言わないけど……  親に反対されてない?」 「まぁ、親公認だしね」 「そっか」 一は少し動揺する。 なぜなら一は美姫のことが好きだからだ。 一にはジンクスがある。 【自分が好きになった人は別の人としあわせになる】 そのジンクスの重みがつらくなる。 わかってはいた。 付き合っていることも知っていた。 むしろ応援もしていた。 でも少しだけ泣きたくなった。 ――数日後 一は、最近みさきといることが多い。 帰り道が一緒どころか。 一の家の前にある。 アパートがみさきの家だった。 そしてふたりはご飯をお裾わけするようになり。 そしてふたりは互いの家に出入りするようになり。 仲が良くなった。 そしてそのまま春休みになった。 一の気持ちが少し揺れていた。 「今日もいい天気ですね」 みさきの言葉に一は喜びを感じる。 「今晩のおかずはなんですか?」 無限に会話できる喜び。 ずっと一緒に入れる感覚。 いろんな気持ちが一の中で揺らぐ。 そして思った。 これが好きって気持ちなんだと。 だから一は、美姫と護の旅行の出発を笑顔で送った。
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