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2.AV女優も吃驚だ
「お、おーい……んん?」
呼び掛けてもやはり返事はない
瞬きもしていなければ呼吸をしている様子も無かった
「つ、作りモンか?めちゃくちゃリアルだなぁ……」
ほうと感心しつつ、無意識に手が伸びる
どこにでもありふれたザ・村人な服装だけど、そこから垣間見える胸板が厚くて逞しくて気づいたら既に触れていた
「わわ、感触までリアルだ……ひえぇ、かっこよすぎる……」
ペタペタと憧れの勇者である胸板を許可もなく触りまくる
こんな機会一生ないだろ!ってほど触ってたら急に頭上から声が降ってきた
「あ、あの、そんなに触られるとくすぐったいです」
「へぇッ!?ぅわっ!!」
勇者が突然喋りだした
余りにも驚きすぎて再び腰を抜かして地面にまた尻餅をつく
「ご、ごごごごめん!!作りモンだと思って!!ほんとに!!余りにも美しすぎて!!悪気はないんです!!どうか勘弁して下さい!!」
世界選手権に出れるんじゃないかと思うほど尻餅からの土下座の姿勢にシフトする速さは目を見張るものがあった
点数に表すと10点、10点、10点だ!出るかそんな不名誉な大会
地面に顔をくっつけて勇者に許しを請うても、全く返事が返ってこない
もしかしてキレた?ううう!この悪い右手め!出来心だとしてもやっていいコトと悪いコトがあるだろ!
まるで他人事のように、右手を握り締め唇を噛みしめる
そろそろ顔に当たる雑草がこそばゆくなり、恐る恐る上を見上げると再び勇者が、次は口を開いたままその場に停止していた。どゆこと?
「あ、あの……?」
まるでピクリとも動かない
AV女優が時間停止系のエロビデオで瞬きを我慢してピクピク動いているような様子もない
一体全体どういうことだ?
俺は立ち上がり、マジマジと見つめる
やはり先程とは少し表情も違う気がする
少し照れるような表情のまま、微動だにしない
「だ、大丈夫か……?」
次は二の腕を叩くようにトントンと触れてみる
すると驚くほどの光の速さで、その腕を掴まれた
「あのっ!」
「ひ!ひぃ!?すいません!!ほんと!ごめんなさい!!」
強い力で手を捕まれ、引っ込めようにもビクともしない
やっぱ勇者力つえー!そこに痺れる憧れるぅ!俺は呑気か
「あっ……ご、ごめんつい。何か俺、急に動けなくなってしまって……意識はちゃんとあるんですけど、身体が動かせないんです……」
「へ?」
「あぁ、急にそんなこと言われても困りますよね!?でも、何故か貴方が触れた瞬間動けるようになって、俺も何が何だか……」
お互いが困惑したように俺はアホ面で瞬きを数回パチクリさせ、勇者は困ったように眉を顰める
「え、えぇと……」
動揺しながらとりあえず掴まれている勇者ラシエルの手を見つめる
逞しい手だなぁ、同じ十八歳だなんて到底思えない。それにしても自分のこのヒョロヒョロの手は、一体全体誰なんだろうか……
もっと焦るべきこの状況で呑気に呆けていると、その目線に気づいた勇者が、あっと閃いた声を出した
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