20.火焔の国バルダタ

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「ーーッッ危ない!」 目で捉えたのは、噴火した火口の中から大きな火山弾が里目掛けて飛びかかってきている光景だった 「おわっ、ら、ラシエル!平気だって!」 「えっ……?」 ぎゅう、と強く抱き締め続けるラシエルの腕をリュドリカはトントンと叩いた 降り掛かる筈の噴石は、あの勢いのまま落下するのであれば、もうとっくに地面に叩き付けられてもおかしくないはずなのに、その時はまだ訪れない その代わりに、ジュウウッと鉄板を焼き付けるような甲高い雑音が頭上で反響している 見上げた先にあったその音の正体は、里の上空に張られた防御結界が、噴石を焼き尽くすようにしてその結界の中に吸収しているものだった まるで溶岩で作られたような結界が、活火山バルの麓全体を円環を描きながら囲っている 「あ、あれは……」 「うっわぁ、リアルで見ると物凄い迫力だな……」 「あれが……リュドリカさんの魔法ですか?」 「えっ!?違う違う!あの活火山に棲むエンドルフィンって鳥の力だよ。この国の守護鳥で、不死鳥でもあるんだ」 ラシエルはその言葉に、不信感を買ったのか火口の付近に再び目を向ける 山頂から緩やかに流れ出る溶岩流の海を、まるで鼓舞するかのようにこの国の守護鳥であるエンドルフィンは、巨大な翼を羽ばたかせ、激しい噴石の雨を降らせている 結界にけたたましく振り撒く火山弾の嵐に、今にもヒビが入りそうだった 「その鳥は……火口の付近で何だか暴れてるように見えるのですが……」 「あぁ、それは洗脳されてるからだよ」 「洗脳を?一体誰に?」 「誰にってそりゃ勿論まお……」 そこまで言って、ハッと気づく。 まだラシエルには、魔王が復活した事を知られる訳にはいかないのに、うっかり失言してしまいかけてリュドリカは突然口籠る 「あっ……えと、む、むし……?そう!虫!ほらっ鳥に寄生する虫いるじゃん!それのせい!」 「はあ……」 明らかに取って付けたような言い訳に、ラシエルはなるほどと納得してくれた 「うん!だからこの里は安全なんだよ!……てかいい加減放せよっただでさえここは暑いのに!」 もうこれ以上は言及されたくないので、リュドリカは未だに抱きついたままのラシエルの腕をペシンと叩く ラシエルはああすいませんと、漸く拘束から解放した 「ところで……この里には、家屋はあるのに人の姿が見受けられませんね」 「そうなんだよな。多分、この先の……」 すると、突然怒鳴りつけるような大きな声が遠くから聞こえてきた
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