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旅のはじまりはさよなら
穏やかな春の陽射しと爽やかな風に緑の葉が揺れていた。ひとり部屋でため息に包まれふさぎこんでいた僕は思い立ったようにクルマのカギだけを握り部屋から出た。その爽やかな春の風にのって住み慣れた街の匂いのようなものがした気がした。やがて走り出したクルマにゆく宛てなどない。海沿いの国道をただ南へ走らせていた。何時間かしたら夕陽が海に沈みかけるのをサイドウインドウからみた。
何がいけなかったのだ
何に怯えていたのだ
何を手に入れたかったのだ
突然に全てが馬鹿馬鹿しいものに思えた
もう全てを捨てるのだ
もう全てを失うのだ
誰か別れを告げねばならない人もない
さよなら
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