第2話 話し方教室

2/2
前へ
/42ページ
次へ
 話し方教室は、自己紹介から始まった。かなり緊張したが、なんとか自己紹介ができた。  2時間の話し方教室が終わり、同じ受講生の男性が声を掛けてきた。 「お疲れ様です。よかったらこの後カフェでも行きませんか?」 「あ、はい。ぜひ」  あまり人との交流に慣れていないため、緊張しつつ答えた。先程の自己紹介で、彼は鈴木大吾さんという名前だと言っていた。僕よりも少し年上のようだ。  すぐ近くにある古民家風のカフェに入った。 「ごめんね、いきなり誘ったりして。自分は接客の仕事をしてるから、話し方教室でコミュニケーションを学びながらできるだけ受講生の人たちとも交流したいなと思ってて……」  話しを聞いている感じ、鈴木さんはそこまで話すことが苦手ではなさそうだ。仕事上、人と接する機会が多いため、今よりもコミュニケーション能力を上げたいということらしい。  コーヒーを飲みながら、お互いの普段のことやコミュニケーションでの悩みなどを話していた。 「じゃあ、阿部くんは学生時代は全く声も出せないほどだったんだね」 「そうなんです。自分でもなんでか分からないんですけど、家では話せるのに学校とかでは全く話すことができなくて……」 「それさ、"場面緘黙症"じゃない?」 「"場面緘黙症"??」 「そう、家や近しい人とは普通に話せるけど、学校や会社などの社会的な場面で全く話せなくなってしまう症状のことだよ」 「そんなものがあるんですか、全然知らなかったです」  僕は、"場面緘黙症"という言葉自体、今初めて聞いた。 「ネットでも出てくるから、調べてみるといいよ。実は、僕も場面緘黙症だったんだよね」 「え、鈴木さんもですか?全然そんな風に見えないですけど……」 「僕の場合は大人になるにつれて徐々に良くなっていって、今はまあまあ話せるようになってきたんだよね。でも、学生時代は阿部くんと同じで全く話すことができなかったんだよ」 「場面緘黙症かぁ……」  場面緘黙症という言葉を初めて聞いた僕は、家に帰って早速ネットで調べた。  出てくる情報を見ていくと、自分の症状とかなり一致していたため、僕は場面緘黙症だからあんなにも喋れなかったんだと知った。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加