第3話 お笑い

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 舞台で漫才をして客席がどかっとウケたときのあの漫才師のかっこよさは、テレビとは違った空気感があった。  僕はいつしか、漫才師が憧れの存在となっていた。  さらに、お笑いを好きになって気づいたことは、ブサイク、ハゲ、チビ、デブなどのネガティブな特徴が、お笑いのネタになると武器になるのである。それらの特徴と話術を使ってお客さんを笑わせ、見ている人達はたくさんの笑顔で幸せな気持ちになるのだ。  僕自身、人と話すことが全くできず、それにより日常生活にも支障が出るため自分のことが大嫌いであったが、お笑いを好きになったことで自分がマイナスだと思っていたことも全てプラスにひっくり返せることに気付き、自分のことが少し好きになった。  お笑いの劇場、B1シアターに行った翌日は日曜日で、話し方教室の日。今回の内容は3分間スピーチで、1人3分ほどの時間でスピーチをすることになっている。  今日のテーマは「わたしの好きなこと」について。  開始時間が近づき、教室には少しずつ受講生の人達が集まってきた。 「阿部くん、こんにちは」  笑顔であいさつをしてきたのは、鈴木さんだ。
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