第1話 場面緘黙症とは

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第1話 場面緘黙症とは

 『場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)』とは、特定の社会的場面において話すことができない状況が長期的に続く状態のことをいいます。  知的な問題や言語を話す能力に問題があるわけではありません。わざと話さない・恥ずかしくて話さないなどとも違います。また、人見知りとも違います。  不安症の一種、情緒障害の一種といわれることもあります。  ガー、ガー、ガー……という機械の音が響く工場で、今日も食品の検査や箱詰めなどの作業をしている僕は、阿部春馬。食品関係の工場で働く19歳だ。  物心付いた頃から、家や近所以外の場所では全く声を発せられない場面緘黙症だった。  学生時代には全く話さなかったため、クラスメイトからは「なんで話さないの?」とよく言われ、担任の先生からは「話さないと将来困る」と言われたが、そんな本人自身が何故話せないのか分からないのだから、どうしようもなかった。  場面緘黙症なんていうものがあることすら知らないため、自分が何故こんなにも普通に話せないのか、声を出すことができないのか分からなかった。  それは幼稚園から小学校へ上がり、中学、高校になっても改善する兆しが見られなかった。  話せないため友達もできず、いつも1人でいた。
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