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「……ん。あいつが、あんたに隠しごとするわけないしな。
知った上で、あいつのこと受け入れているなら、オレから言えることは、何もないけど。
ただ」
私を見つめる神林透の眼が、挑むように真剣みを増す。
「……あんただけは、裏切らないでやってくれよな? あいつが、どんな状況にあっても。
信じてる人間から裏切られるだなんて、一度経験すれば、十分だろ?」
告げられた声音の強さに、胸が詰まった。
彼の言葉から、大地へ向けられた無償の愛を感じたからだ。
……ああ、そっか。
大地が、大地でいられたのは、この人がいたからなんだ……。
「───ありがとう、トオルくん。大地の側に、いてくれて」
私の言葉に、彼は目を見開いた。
ふいっと目をそらして、テーブルに頬杖をつく。
「……勘違いすんなよ。オレができたのは、あいつの話を聞いてやることくらいだ。
あいつが抱えた複雑な事情を知ったって、何もしてやれなかったんだ。正直、オレが手に負える問題じゃねぇなって、思ったし。
結局あいつは、あいつ自身で自分を支えてた。
……救いがあったとすれば、あんたを想う気持ちだけだったんだ。
だからさ」
そこで大きく息をついて、トオルくんは、私をじっと見据えた。
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