9.この想いと情熱の行く手

1/10
前へ
/277ページ
次へ

9.この想いと情熱の行く手

職種柄、日曜が休みということは少ないのだけど、その日、私は休みだった。 洗濯と掃除と、ちょっとした雑用 (お店の従業員に渡すシフト表の作成やら新作スイーツの手書きPOPの作成やらだ) を片付けたら、お昼になっていた。 「初めてだね。家で、まいさんと、二人っきりのランチタイムなんて」 はいどうぞ、と、目の前に差し出されたのは、レタスとベーコンのチャーハンだ。 市販の中華スープと共に、大地が用意してくれた。 父さんは、接待ゴルフに行っていた。 「家事とお仕事は、ひと段落したんだよね? なら、午後からは、僕と遊んでくれる?」 「あんた、課題だされてるって、言ってなかった?」 「まいさんが家のこととかやっている間に、終わらせたよ。だから、いいでしょ?」 「いいけど……何したいの」 中華スープに口をつけ、ちらりと大地を見た。ふふっと大地が笑う。 「えっちなコト」 ぶっとスープを吹き出しかけて、大地をにらむ。 「昼間っからアホなこと言ってると、殴るわよっ」 「……冗談なのに。まいさん怖いよ」 「あんたが言うと、冗談に聞こえなくて、こっちが怖いっての!」 唇をとがらせて不満そうに私を見る大地に、負けずに言い返してやる。 食べ終えた皿を流し台に運びながら、大地がリビングの方を指差す。 「あれ。チェス」 つられて見ると、すでにチェス盤がテーブルの上にのっていた。 ……もう、最初から言えってのよ。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

211人が本棚に入れています
本棚に追加