9.この想いと情熱の行く手

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「前に、まいさん、僕に教えてって、言ってたでしょ?」 大地がこの家に持ちこんだ、数少ない荷物の中にあったチェス一式。 訊いてみると、小学校の頃からやっていて、そこそこの腕前だという。 「うん。やってみたい。教えて!」 意気込んで言うと、大地はちょっと笑った。私の側にひざまずく。 「いまの、僕のことギュッて抱きしめて、もう一回言って?」 ───この、甘ったれがっ。 ***** やってみると、予想以上に難しくて、小一時間でギブアップすることになった。 手にしたナイトの駒を、元の位置に戻す。 「だめ。ここまでが限界。また今度にしよ……? お茶()れてくる」 「うん。分かった。 棋譜(きふ)は頭に残してあるから、いつでも続き、できるからね」 チェスを片付けながら、大地がふふっと笑う。 ……くそう。バカにしてるな。 二人分のミルクティーを淹れて、大地の元へ持って行く。 「……大地。どこか行きたい所とか、ある?」 「え?」 カップを受け取った大地が、きょとんとした顔を私に向ける。 唐突な質問だったかと反省しながら、ミルクティーをすすった。 「んーと……あんた、あんまり友達と遊んだりしてなさそうだし……。私と出かけるのが、ヤじゃなかったら、だけど」 「嫌なわけないよ! まいさんと一緒なら、僕、どこへだって行きたい!」
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