9.この想いと情熱の行く手

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親戚たらい回しにされたら気の毒だって、そんなこと、百も承知で産んだのだろうに。 それが嫌だったら、堕胎すればいいだけの話でしょう。 道に外れた子を産んで、人並みに扱ってもらおうだなんて、厚かましいったらありゃしない」 「伯母さん!」 大地を前にしてのあまりの大人げない発言に、たしなめるように声をかける。 隣に座った大地が、私の膝に触れ、軽く首を振った。 とたん、伯母さんの目が、つり上がる。 「何をしているの!? 汚らわしい! 舞美から、離れなさいっ」 ヒステリックな叫びに、私は言葉を失った。何を言われたのか、一瞬、理解できなかった。 ……大地がうつむいたのが、分かった。 「だいたい、あなたのその耳、なんですか。男のくせにチャラチャラして……髪は真っ茶っ茶でだらしなく伸ばして……。 そんなことじゃ、まともに就職だってできませんよ。 いったい、どういう育て方をされたのかしら。あきれて物が言えないわ。 まぁ、他人(ひと)の旦那を盗むような、ドロボウ猫の息子ですものね。 そもそも本当に恭一さんの子かどうか、分かったものじゃ───」 「いいかげんにしてください!!」 我慢の限界だった。 いくらなんでも、いい歳した大人が、高校生とはいえ、まだ親の庇護(ひご)を受ける立場にある子供に対して、言って良いことではないだろう。
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