おなかが空いた

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 なんと、店主らしきオヤジが店のシャッターを下ろしているではないか!?  「ちょっと待って! もう閉めちゃうの!」  店主のオヤジは言った。「ああ! すまねえが、女房が急に産気づきやがってよ! すぐに病院へ行かなきゃならねえんだ」  と、言ってオヤジはシャッターを下ろし、店の中へと消えた。  黒木は二軒となりにある道産娘ラーメン店のほうに目を向けた。MAPアプリによると、この辺りはラーメン激戦区で何軒ものラーメンでひしめきあっている。  黒木は、道産娘ラーメンに向かった。ーーが、店内から血相を変えた店主らしきオッサンが表に駆け出してきた。  オッサンがシャッターを閉めだした。黒木は大慌てでオッサンに問うた。 「もう閉店ですか?」 「うちの嫁さんも、産気づいたようなんだよ!」オッサンは言った。「なまら、今日は閉店だ」  黒木は急激に嫌な予感がして、うしろを振り返った。そこには、つけ麺の店がある。  予感が的中していた。なんと!? つけ麺の店のシャッターも閉じられようとしているではないか。 「まさか……あんたのところも、奥さんが産気づいたんですか?」黒木は訊いた。  店の主人は言った。「うちは今から種付けをするんでさあ」  と、シャッターが閉まった。と、黒木はシャッター越しに怒鳴った。「そんなこと。営業時間が終わってからしろ!」  見るとラーメン屋はみんなシャッターが閉まっている状態になってしまった。なんということだ。昼の書き入れ時に、こんなことがあってもいいのだろうか。黒木は焦りだした。もうなんでもいい。とりあえず、開いている店に入ろう。
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