3人が本棚に入れています
本棚に追加
なんと、店主らしきオヤジが店のシャッターを下ろしているではないか!?
「ちょっと待って! もう閉めちゃうの!」
店主のオヤジは言った。「ああ! すまねえが、女房が急に産気づきやがってよ! すぐに病院へ行かなきゃならねえんだ」
と、言ってオヤジはシャッターを下ろし、店の中へと消えた。
黒木は二軒となりにある道産娘ラーメン店のほうに目を向けた。MAPアプリによると、この辺りはラーメン激戦区で何軒ものラーメンでひしめきあっている。
黒木は、道産娘ラーメンに向かった。ーーが、店内から血相を変えた店主らしきオッサンが表に駆け出してきた。
オッサンがシャッターを閉めだした。黒木は大慌てでオッサンに問うた。
「もう閉店ですか?」
「うちの嫁さんも、産気づいたようなんだよ!」オッサンは言った。「なまら、今日は閉店だ」
黒木は急激に嫌な予感がして、うしろを振り返った。そこには、つけ麺の店がある。
予感が的中していた。なんと!? つけ麺の店のシャッターも閉じられようとしているではないか。
「まさか……あんたのところも、奥さんが産気づいたんですか?」黒木は訊いた。
店の主人は言った。「うちは今から種付けをするんでさあ」
と、シャッターが閉まった。と、黒木はシャッター越しに怒鳴った。「そんなこと。営業時間が終わってからしろ!」
見るとラーメン屋はみんなシャッターが閉まっている状態になってしまった。なんということだ。昼の書き入れ時に、こんなことがあってもいいのだろうか。黒木は焦りだした。もうなんでもいい。とりあえず、開いている店に入ろう。
最初のコメントを投稿しよう!