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東京駅_2
私はコンサルティング会社で一般事務の仕事をしている派遣社員だ。電話を取り次ぐことはあれど、私自身に用事があって電話をかけてくる人はまずいない。それに社内の人間なら、社用の携帯電話へ直接連絡をするのが通例。
だから、福岡支店の社員で武内七瀬と名乗る人物から『戸樫和咲さんですか?』と名指しで外線電話がかかってきたこと自体が奇妙だった。
「お疲れ様です。戸樫和咲は私ですが、どういったご用件でしょうか?」
『あ、はい……あの、いまお電話……突然すみません……戸樫さんの携帯の番号とかわからなくて。メールでは言えないし……』
何か事務ミスでもあったのかと、用件を聞き出そうとしても『話しづらくて』と言い、しどろもどろで要領を得ない。表示されている番号は、おそらく個人の携帯電話。
(福岡支店とのやり取りあったかな? そもそもこの人は本当に福岡支店に在籍している人だろうか?)
そう疑い始めていた私は、ようやく告げられた電話の目的に言葉を失った。
『あの、わたし、真臣くんの子供を妊娠してるんです。だから、戸樫さんは真臣くんと別れてほしいんです』
仕事のことだとばかり思い込んでいたから、しばらく理解が追いつかなかった。
多分、私は今、ものすごく変な顔をしていると思う。
向かいの席の藤原さんがずっとこちらを見ている。私が取り次ぐ様子がないので、かかってきた電話が誰宛なのか気になるのだろう。
首をかしげた彼女から「クレーム?」と小声で聞かれたので、慌てて首を横に振った。そんなこちらの状況にはお構いなしに、電話の向こうの武内さんは話を続ける。
『お願いします。別れてくれませんか?』
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